姑の思い出~梅ジュース作り、引退表明

嫁の気持ち、姑の気持ち

毎年今頃になると、姑の手製の梅ジュースが出来上がる。

梅ジュースは、大き目の瓶に入って、うやうやしく手渡される。

その瓶には大きな紙が貼りつけられていて、姑が油性ペンで書いた梅、ハチミツ、砂糖の分量と、漬けた日付と完成した日付が書かれている。

手渡される時の話はいつも決まって同じ。
「まず、瓶を洗って、それから熱湯消毒をして、それからジュースを詰めて、ちゃんと湯煎をしてあるからね」
と手間暇をかけて、衛生面には多大な配慮をしたよと姑は言いたいのだ。

二日か三日かかる最後の工程の作業を、それぞれ何日の何曜日にしたか、何度の温度で何分間湯煎したかも必ず詳細に伝えられた・・・(^^;

嫁に来てから私が知る限りでは、毎年姑は手製の梅ジュースを作り、私は毎年ただ貰って、飲み続けた(笑)
因みに貰うのは私だけではない。義妹にも同じように渡していたから、毎年たくさんの梅ジュースを作っていた。

これが、もう、ものすご~く美味しいの。
その年の一番初めの一杯は、分かっていても感動する。

市販のものとは、まるで別物。
水で割って氷を入れてもいいけれど、炭酸で割るのも大好き♪
私も息子も、息子が幼い頃は遊びに来た友達にも、この梅ジュースを振る舞って、皆誰もかれも、姑の梅ジュースを「美味しい!」と言って喜んで飲んだ。

「おばあちゃんの梅ジュースを飲むと、夏が来た!って感じがする」と息子は言って、いつしか我が家の夏の風物詩となっていたほど。

そしてやがて秋になる頃に、飲み終わると、空いた瓶は丁寧に洗って、姑を真似て熱湯消毒をし、返すのが私の唯一の仕事だった。

冬場は、喉に良いと言われる「かりんジュース」も毎年作っていたので、瓶はたくさん使うからだ。

でも、2年前の夏、梅ジュースを手渡された時に、
「もう、空いた瓶は持ってこなくていいから、何かに使ってね」
と姑は言った。
もうね、梅を買ってきたり、漬けたり、色々なことが億劫だからようやらんわ、だからこれでもうお終いにする」
と。

その時姑89歳。年齢を考慮すれば当たり前なのだが、悲しく、本当に残念だった。
けれど、潔い引き際だなとも思った。
姑はいつもの梅仕事をし、いつものレシピで漬けて、いつものように消毒をし、完璧な状態で渡したかったんだと思う。
途中でできなくなるかもしれない、と不安があるなら、やめた方が良いと判断したのだろう。

そんなふうに、梅ジュース作りから引退を表明した姑だったが、その最後の年の梅ジュースはいつもの慣れ親しんだ味とは違って、酸っぱかった。

姑の梅ジュースの味がブレるということは、20年以上の間で初めてで、今までとはもう少しずつ何かが変わってきたのだな、と姑の老いを認めないわけにはいかなかった。

そして、引退表明通り、昨年は梅ジュースは作られることはなく、今年に入って姑は亡くなった。

梅ジュースのない夏にまだ慣れることができない。
空き瓶は、空いたままだ(笑)
もっと、ちゃんと作り方を聞いておけば良かったかなぁ・・・

でも、どう頑張ってもあの「いい味」にはならないと思う。
ジュースの他にも、美味しかった姑の料理は色々あるんよ。
黒豆とか味噌汁とか、炊き込みご飯とか。
あー、「あの味が恋しい」って、こういうことを言うのね。

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