もう10年近く前にベストセラーになった内館牧子さんの著書「終わった人」を読みました。
2018年には映画化もされて話題になっていたのも納得の面白さ。
その当時に読むのでなく、50代を折り返した今になってから読んだことで、一層物語をリアルに感じて共感の嵐。
この本のテーマはズバリ「夫の定年」
主人公は東大卒のエリートサラリーマン。仕事一筋で生きて来て、ついに定年の日を迎えたところから物語はスタートする。
退職金と年金で老後の生活には余裕がある。庶民とはちょっと違う。ワンランク、ツーランクぐらい上のハイソな感じが漂う。それは本人のこれまでの努力の賜物。
これからは妻とのんびり旅行でもという思いも、美容師として生き生きと働く妻には相手にされない。
それどころか、妻と娘から「恋でもしたら」とからかわれるくだりには笑った。
妻!と娘!から恋を勧められる!ふふふふふー。
そして、本当に出会いも訪れるのだが、63歳の恋はそう容易くコトが運ばない。
若い頃の恋とはどうも勝手が違うようで、不倫の恋に溺れていく現実離れした展開にはならない。
それがまた妙にリアルで共感できる。
暇を持て余してジム通いの日々は虚しく、「まだ、仕事がしたい!」と再就職を決意するも、輝かしい経歴が邪魔をして思うようには決まらないという悲劇。
大学院の受験を思い立つなど自分探しを続ける中で、紆余曲折を経て、顧問として再就職し、やがては会社の代表取締役を引き受けることになる。
が、これが思わぬ人生の大きな転機となる。
取引先からの煽りをくって会社が倒産してしまい、一億以上あった財産のほとんどを会社につぎ込むことになって、妻からは卒婚を言い渡されるハメになる。妻はこの少し前に自分の店をオープンしたところだ。
ラストは故郷の盛岡の実家で母親と暮らすというエンド。
でも、そこに悲しさや虚しさはなく、地元の同級生たちとの温かい関わりや、距離をおいた妻との心地よい関係などにも希望が感じられて、決して悲劇的ではない良い結びだった。
この、ドラマチックな展開、現実におきたら耐えられない。
代表取締役社長の座に就いたばかりに、これまで築き上げてきた資産の大半を失うことはあまりにもツライ。しかも63歳という年齢で・・・安泰な老後が一気に吹き飛び消えてなくなった。
妻のお怒りもごもっとも。
庶民の発想だと、年金だけでも暮らせそうな感じはあるが、急に生活のレベルを落とすことは難しいのだろう。
離婚ではなく、遠距離別居で夫婦の関係を維持していくのは良い選択に思えた。
「老後」っておまけの人生というには、あまりに長い。
だから皆、もがくんだと思う。
自分の人生の締めくくりに納得したいから。
夫の定年は長年連れ添った妻にとっても節目の時となる。
セカンドライフに夢や希望があるのなら、それを叶えるチャンス。
「終わった人」の妻は、安泰な老後は失ったけれど、自分の店を持ち、故郷に帰る夫とは別に暮らすという自由を得た。
避けることの出来ない夫の定年。
定年を迎えるその時が近づくことは、妻の大きな悩みとなることも多いようで。
まず、収入、家計の問題。
現役時代より収入が減るから家計のスリム化はマスト。
でも、そんな当たり前のことよりも、妻の問題はずーっと夫が家にいることらしい(笑)
ウチにいる夫の存在そのものが憂鬱でストレスなのだとか。
夫があと、1年、2年で定年という人は口を揃えて
「もっと働いてもらわなくちゃ!」と言う。
雇用の延長が決まったとか、再就職が決まったと言って手放しで喜んでいる。
家計の心配もさることながら、家にいたってやることないんだし、ずっと二人で顔を突き合わせるなんてイヤ!それはシンドイという本音がチラリ。
へー、そういうものか・・・とシングルマザーは蚊帳の外です。
「今までずーっと家族のために働いてくれたんだから、もうのんびりしてもらってもいいんじゃないの?」
という発想は、夫のいないシングルマザーだけのようで、そう言うと驚かれる。
もしも、夫が生きていて、まだ会社勤めを続けていたら、ウチは定年退職まであと5年。その時、私はなんと声をかけただろう。
「今までご苦労様でした。これからは、好きなようにしてくださいね」
と言えたかな?
うーん・・・ふっふっふ(笑)ま、セカンドライフに夢や希望があるって素晴らしいなぁ!と思う(^^)/
この世代、やっと子供を育て上げた!と思ったら、この先待っているのは
夫の定年、親の介護、加齢による体調の変化・・・という厳しい現実(^^;
えー、ま、難しい問題はそっとしておいて(笑)
続いて内館牧子さんの「老害の人」を読み始めました。これもまた面白すぎる。
「老害の人」にならないように、よく読んで覚えとかなくっちゃね!
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